自治体のICT活用とは?メリットと導入事例、課題

2023年04月25日

「ICT」とは?

ICTとは「Information and Communication Technology」の略称で、従来の「IT(Information Technology)」に「Communication」が加わったものです。日本語では「情報通信技術」と訳されこともあります。単にIT技術を指す用語ではなく、それを活用したコミュニケーションも含んだ意味合いとなります。

自治体のICT化の現状

以下のグラフでもわかるように、年々ICTを導入する自治体は増えてきています。

引用:総務省 地域におけるICT利活用の現状に関する調査研究(平成29年)

特に防災や教育分野でICTを活用している自治体が多く、他のさまざまな分野でも徐々にICT化が進んでいることが伺えます。

その一方で、多くの自治体のICT化がまだ十分に進んでおらず、自治体間の格差が明確になりつつあります。自治体のICT化には導入コストがかかり、現状では予算に恵まれている自治体を中心にICTの活用が進んでいます。

予算が不足している自治体にとっては、いかにコストを抑えてICT化を進めるかが課題となっており、費用対効果の高い外部サービスを活用することがポイントになるでしょう。

自治体でICTの活用が必要な理由とは

自治体でICTの活用が必要な理由として、おもに次の4つが挙げられます。

  • 人口減少の加速
  • 東京圏への人口集中
  • 地方公共団体の労働力の減少
  • データ活用による業務の効率化や生産性向上が必須

ミーティング日本は2010年代から人口減少が始まっており、将来的にもこの傾向が続くことは確定的であり、特に地方での人口減少は深刻な状況です。人口減少を食い止めるためには、住民にとって住みやすい街に生まれ変わらなければなりません。

自治体がICTを活用すれば、住民の生活利便性の向上が期待できるので、住民の転出を防ぐことにつながります。

地方の人口減少の原因の一つである東京への人口集中はいまだに歯止めがかからず、特に若者に対して地方に住むことが魅力的であると感じてもらえなければ、この状況は変わりません。地方公共団体の人口減少は、労働力の低下にも直結しており、地方産業の衰退をもたらしています。自治体がICTを活用することによって、地方産業を復興させる効果も望めるのです。また、ICTの活用は自治体の職員の業務効率化にもつながり、住民の満足度がアップします。

それぞれの自治体が元々持っている強みを活かし、特定の分野に特化したサービスを提供することが効果的で、そのためにはICTの活用が欠かせません。自治体がICTの活用によって独自のサービスを取り入れ、住民の生産性を向上させなければ、地方経済を活性化させることは不可能といえます。逆に自治体の経済活動が活発になれば、移住者の増加も期待できるでしょう。

自治体のICT活用のメリット

自治体がICTを活用するメリットとしては、おもに次の3つが挙げられます。

  • 住民サービスの利便性が向上し、住民との接点も生まれる
  • 情報技術を活用し、防災体制の強化が図れる
  • 少子高齢化による労働人口や税収の減少に対応できる

ICT自治体がICTを活用すれば、住民へのサービスが充実し、生活利便性が向上します。信頼感も高まり、住民と自治体の接点が増え、地域への愛着が増します。住み続けたいと思える街づくりにもつながるでしょう。

また、ICTの活用は自治体の防災体制の強化にもつながり、住民に安心感をもたらします。近年の異常気象により、全国で自然災害が増えており、防災対策は喫緊の課題です。既にICTを活用している自治体の多くが防災体制の強化を実現しており、それによって信頼感や安心感も高まって人口流出を食い止める効果が表れています。

人口減少は地域産業の生産性低下をまねき、税収の減少にもつながるため、自治体が頭を悩ませている問題の一つです。ICTの活用によって住民に住みやすいと感じてもらえれば、自治体の人口減少を食い止めることにつながります。

税収は自治体の予算に直結するので、安定した税収が得られればサービスによる還元もしやすくなり、住民の満足度が高まるという好循環が生まれるのです。

このように、自治体がICTを活用するメリットはさまざまあり、早期に導入すべきといえます。

地方自治体のICT活用の事例

ここでは、地方自治体のICT活用に関する事例を4つご紹介します。

Ap-Portalの防災に関する事例

福島県伊達市ではAp-Portalを導入し、「伊達市防災アプリ」を市民に提供しています。自然災害の市民に情報をいち早く伝え、安全な暮らしを守るために開発された防災アプリです。

Jアラート・地震情報・気象情報などをプッシュ通知で発信し、市民がそれを受信することで最新の防災情報を把握することができます。さらに、伊達市独自の「防災無線聞き逃しサービス」を追加し、情報格差を防ぐ工夫がされています。日本語だけではなく英語でも情報提供しているので、外国人居住者にも正確に情報を届けることができます。

業務時間の削減に関する事例

東京都多摩市では、ICTを活用して自治体職員の業務時間を約50%削減することに成功しています。

同市がICTの活用を目指した背景には、昭和46年に開発された多摩ニュータウンに団塊の世代が多く居住しているため、高齢化の波が自治体の業務を圧迫していたという状況がありました。

RPAを導入することによる業務改革を遂行し、業務プロセスや作業を自動化することによって、業務の効率化を目指しました。

観光に関する事例

北海道では、放送コンテンツの海外展開による観光振興を実施し、大きな成果を得ています。台湾のケーブルテレビ局と提携し、北海道の観光情報を紹介する番組「北海道アワー」を、台湾をはじめとする東アジア地域に向けて毎週放送しました。

この事業は自治体が中心となって道内の放送局・北海道経団連・商工会議所等が連携することによって実現し、現在でも「公益社団法人 北海道観光振興機構」として活動しています。

97年の放送開始以来、台湾からの観光客が急増し、2年間で約2倍・10年間で5倍以上という大きな成果を生み出しました。

地方創生に関する事例

徳島県神山町では、サテライトオフィスプロジェクトによる移住者の呼び込みが大きな成果を挙げています。古民家や蔵を改装したサテライトオフィスを造り、おもに首都圏のICTベンチャー系企業にアプローチしてきました。

また、徳島県ではカバー率98.8%というFTTH網や、全県域に公設民営方式の光ファイバー回線を敷くなど、全国で比較してもトップレベルの高速ブロードバンド環境が整備されています。

この取り組みによって神山町では雇用が増加し、平成23年には「社会増」が「社会減」を上回りました。

ICT活用の課題

情報セキュリティーの扱い

自治体は住民のさまざまな個人情報を取り扱っているので、ICTを活用するうえで情報セキュリティーの扱いは特に重要です。住民の個人情報が流出してしまうようなことがあれば、自治体の信用は大きく損なわれます。

サイバー攻撃はICT技術の進歩に並行するように悪質化しており、セキュリティー対策のアップデートが欠かせません。外部サービスを利用して日常的に監視できるシステムを導入し、PDCAサイクルを繰り返すなど、継続的かつ最新の対策が必要です。

ICT導入における知見がない

疑問自治体がICTを活用するにあたって障壁となり得るのが、ICTに対する知見不足です。各自治体では人材が限られているうえに、それぞれの業務を抱えているため、ICTの学習をするためには時間的な制約が問題となります。

また、自治体ならではの昔からの仕組みや価値観が新しいシステムの導入を阻害するケースも少なくありません。知見を得るための時間が比較的少なくて済むシステムを導入することが理想的です。

予算の確保が困難

自治体がICTを活用する際に、最も力を入れたい分野の一つが防災ですが、災害が起きて初めて成果が分かるものであり、費用対効果を説明しづらいことが難点です。多くの自治体は予算が限られており、費用対効果の見えにくい分野に対して予算を確保することは難しいでしょう。

防災対策にアプリを活用すれば比較的安価に対策が可能なため、予算を確保するハードルが下がります。アプリを活用して防災情報を発信することにより、多くの住民の暮らしを守るサービスが提供できるでしょう。

アプリ導入事例

鳥取県ではAp-Portalを導入し、独自の防災アプリ「あんしんトリピーなび」を提供しています。住民は無料で利用できて多言語に対応しているほか、最新の情報を発信するプッシュ通知や、災害の危険性が高い地域のライブカメラ機能、避難所への自動経路案内機能などが県民の命を守っています。

自治体アプリは安価に取り入れることができるので、導入ハードルは比較的低く、運営に高度な専門知識を必要としないので、教育コストも抑えられます。自治体から住民への情報発信ツールとして活用できるのでおすすめです。

まとめ

自治体がICTを活用するためには、予算の確保や運営知識の習得などが障壁となります。しかし自然災害が増えている現代では防災対策の更新は不可欠であり、喫緊の課題です。

防災対策にアプリを活用すれば、予算が限られている自治体でもICTを活用できる可能性が高まります。この機会にぜひ、Ap-Portalの防災アプリの導入をご検討ください。